【計画女と波乗りライオン】1話
2024-04-26


◯神浜海岸(朝)
朝日が海を照らしている。
海を見つめる1人の男。
男は太刀獅丸(20)。
髪は脱色して白く、肌は日焼けして黒い。
目鼻立ちがくっきりしている。
獅丸「いい波来てる〓 ヒャッホー」
楽しそうな様子でサーフボードとともに海に飛び込んでいく。

◯前浜市役所・戸籍住民課・窓口
戸籍住民課の案内札が見える。
窓口に神島海(22)が座っている。
胸元には「神島」の名札。
姿勢が良く真面目な雰囲気。
メガネをかけている。
対面には若い男女が座っている。
2人、仲良さそうに体を寄せ合い、手を繋いでいる。
海、手元の婚姻届と戸籍抄本を見比べながら、婚姻届に赤い色鉛筆でチェックし頷く。
『受理』スタンプを押す。
海「お待たせしました」
若い男女、笑顔で海を見る。
海「ご結婚おめでとうございます。確かに受理いたしました」
嬉しそうな男女。
微笑む海。
男女、立ち上がり去っていく。
男女を見送る海。
海の声「私は神島海。幸せな人生を送るためには計画が必要」
同僚の橘はるか(20)、海の後ろから声をかける。
はるか「坂木さん、じゃなかった、神島さん、窓口変わりますね」
海「ありがとう。じゃあ、お昼行ってきます」
海、立ち上がり席を替わる。

◯同・食堂
海、テーブルに座り弁当を広げ、手を合わせる。
海「いただきます」
海、弁当を食べ始める。
同期の男性社員・中村佑介(26)、カップ麺と水が乗ったトレーを持って海の前に座る。
中肉中背、黒髪、短髪の男性。
ワイシャツの上に『前浜市』と書かれた蛍光グリーン色のジャンパーを羽織っている。
佑介「よお、海。今日昼当番?」
海「うん。中村くんは? 遅いじゃん」
佑介「ああ、(ジャンパーを触り)観光課の仕事。昼に駅でチラシ配り」
海「そっか。大変そうだね」
佑介「まあ外に出てるほうが気楽だけどね。そういえばどう? 新婚生活は。順調?」
海「もちろん!」
佑介「そっか。なら良かった。海は完璧な人生計画立ててたもんな。22歳で結婚して23歳で子供・・だっけ?」
海「そう。23歳で女の子出産。その4年後、27歳で男の子出産。4歳差なら上のお姉ちゃんも落ち着いた頃だし、受験も重ならないでしょ。それから長男には調理師になってもらって、店を継いでもらう。定年まで働いたら、店を手伝いながら年金をもらって、優雅な老後を過ごすの。そのために貯金も運用もしてるし、公務員になった」
海の薬指に指輪が見える。
佑介「すごいよな、今のところ、計画通りだもんな。初期研修で聞いた時は『なんだこいつ』って正直引いたけど」
海「え? そんなこと思ってたの? ひどい」
海と佑介、笑う。

◯レストラン風・外観
海沿いに立つ洋食レストラン。
敷地内には広い駐車場。
看板には美味しそうなハンバーグの写真。

◯スマホのアプリ画面
妊活アプリ。
カレンダーに赤いハートマークがついている。

◯レストラン風・厨房
スマホを持つ手。
海の夫・神島太一(22)、微笑みながらスマホを操作している。
太一は黒髪で短髪。白いコックコートを着ている。
背は高く、少し神経質そうだが笑うと目尻にシワが出て、可愛らしい雰囲気を出している。
太一、スマホをポケットにしまい、自分の顔を両手で挟むように叩く。
太一「よし!」

◯前浜市役所・食堂
海、手を合わせている。
海「ごちそうさまでした」
海、弁当箱をバッグの中に入れる。
バッグからスマホを取り出しメッセージを確認。
太一からのメッセージ『今日はあの日だよね? 早く海に会いたい』
海、メッセージを見てニヤけている。
海の声「今は来年の出産計画に向けて妊活中」
佑介「うわ、キモ! 一人でニヤけてる奴がいる!」
海「は? 私のこと?」
佑介「他に誰がいるんだよ」

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[計画女と波乗りライオン]
[脚本]

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